千葉大学大学院医学研究院
アレルギー・臨床免疫学
千葉大学病院
アレルギー・膠原病内科
ベーチェット病は原因不明の慢性炎症性血管疾患です。
有病率が東地中海、中東、東アジアの国々で高いことから、「シルクロード病」とも呼ばれています。主に若年成人に発症し(平均発症年齢は25-30歳)、シルクロード周辺の国々では男女比はほぼ1:1となっています。
国内の患者さんの数は、約18000人と言われています。
はっきりとした発症、増悪因子は判っていませんが、白血球の血液型の一つである HLA-B51との関連が示唆されています。
「厚生労働省ベーチェット病診断基準」に従って診断します。
a. 腸管型ベーチェット
多発潰瘍が消化管に出現します。
部位は回盲部(小腸と大腸の移行部分)に多いですが、食道から直腸までのあらゆる部位に出現する可能性があります。
b. 血管型ベーチェット
全身の大中動脈、大中または深部静脈の炎症や血栓により、閉塞、動脈瘤、静脈瘤などが生じます。
肺動脈瘤が発生すると気管支とつながり、血痰、喀血を生じることもあります。
動脈瘤の破裂、大静脈の閉塞のリスクなどから慎重な経過観察が必要です。
c. 神経ベーチェット
運動麻痺、運動失調、脳神経麻痺、痴呆、髄膜炎、脳炎、人格変化、頭痛等、多彩な症状が生じます。
髄液検査で、圧、細胞、蛋白、IL-6などの上昇を認めます。
MRI検査で異常を認めます。
皮膚粘膜、関節炎症状ではコルヒチンの内服が有効です。
また、難治例、重症例においてはステロイドを使用することもあります。
ぶどう膜炎に対しては眼科医によるステロイド(点眼、眼注、内服)とシクロスポリン投与が基本となります。
シクロスポリンは神経ベーチェットを増悪、誘発しうることが報告されており、また、シクロスポリンの急な中止、ステロイドの断続的な使用や急速減量は眼発作を誘発するとの報告もあるため注意が必要です。
近年、本症に合併するぶどう膜炎に対するTNFα阻害剤の有効性が明らかとなり保険適応となっています。