病気について

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ベーチェット病

はじめに

 ベーチェット病は原因不明の慢性炎症性血管疾患です。

 有病率が東地中海、中東、東アジアの国々で高いことから、「シルクロード病」とも呼ばれています。主に若年成人に発症し(平均発症年齢は25-30歳)、シルクロード周辺の国々では男女比はほぼ1:1となっています。

 国内の患者さんの数は、約18000人と言われています。

原因

 はっきりとした発症、増悪因子は判っていませんが、白血球の血液型の一つである HLA-B51との関連が示唆されています。

診断

 「厚生労働省ベーチェット病診断基準」に従って診断します。

ベーチェット病の症状

  1. アフタ性口腔潰瘍
    通常、本疾患の初発症状であり、長く持続ことが多い症状です。主に頬、舌、口蓋、咽頭の粘膜に繰りかえし生じます。
  2. 陰部潰瘍
    有痛性で、女性は外陰部や膣、男性は陰嚢や陰茎に起こります。
  3. 皮膚病変
    結節性紅斑、毛嚢炎様皮疹などが出現することがあります。
    結節性紅斑は発赤、軽度隆起した皮下硬結(皮膚の奥深いところでできる炎症性のしこり)で足のすねによく出来ます。
    また、ベーチェット病の患者さんでは「針反応」が陽性になります。
    *針反応試験の実施法:注射針を前腕屈側面の皮膚および皮下組織に刺して、48時間後、穿刺部位に紅斑性丘疹または膿疱(直径>2mm)を認めれば陽性と判定します。
  4. 眼症状
    典型的にはぶどう膜炎が粘膜皮膚症状の数年後に起こり、しばしば慢性、再発性の経過で進行します。
    重大な視力障害、失明の原因になりうるので、注意が必要です。眼の痛みや見え方に異常がなくても定期的な眼科診察が必要です。
  5. 関節炎
    関節の痛みや腫れが出現します。
    膝、足首などの大関節に起こることが多いようです。これが初発症状となることもあります。
  6. その他
    深部静脈血栓症、副睾丸炎などを伴うこともあります。
  7. 特殊型ベーチェット
    ベーチェット病の定型症状が現れた後に患者さんによっては以下のような病態が生じることがあります。
    通常は年月を経て現れてきます。

    a. 腸管型ベーチェット

    多発潰瘍が消化管に出現します。
    部位は回盲部(小腸と大腸の移行部分)に多いですが、食道から直腸までのあらゆる部位に出現する可能性があります。

    b. 血管型ベーチェット

    全身の大中動脈、大中または深部静脈の炎症や血栓により、閉塞、動脈瘤、静脈瘤などが生じます。
    肺動脈瘤が発生すると気管支とつながり、血痰、喀血を生じることもあります。
    動脈瘤の破裂、大静脈の閉塞のリスクなどから慎重な経過観察が必要です。

    c. 神経ベーチェット

    運動麻痺、運動失調、脳神経麻痺、痴呆、髄膜炎、脳炎、人格変化、頭痛等、多彩な症状が生じます。
    髄液検査で、圧、細胞、蛋白、IL-6などの上昇を認めます。
    MRI検査で異常を認めます。

治療

 皮膚粘膜、関節炎症状ではコルヒチンの内服が有効です。

 また、難治例、重症例においてはステロイドを使用することもあります。

 ぶどう膜炎に対しては眼科医によるステロイド(点眼、眼注、内服)とシクロスポリン投与が基本となります。

 シクロスポリンは神経ベーチェットを増悪、誘発しうることが報告されており、また、シクロスポリンの急な中止、ステロイドの断続的な使用や急速減量は眼発作を誘発するとの報告もあるため注意が必要です。

 近年、本症に合併するぶどう膜炎に対するTNFα阻害剤の有効性が明らかとなり保険適応となっています。