病気について

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好酸球増多疾患

 好酸球は白血球の一種であり、末梢血中の好酸球が増加する病気はアレルギー疾患、寄生虫感染症、悪性腫瘍など多岐にわたり、自然の寛解するものから予後不良のものまであります。

A. 寄生虫感染症

 回虫症、条虫症などの寄生虫感染症に伴い好酸球は増加します。開発途上国への渡航歴、生肉、有機農法野菜などの摂取歴を確認します。

B. 薬剤アレルギー

 薬剤アレルギーは末梢血好酸球増多の原因として高頻度であり、疑わしき薬剤があれば中止します。

C. 気管支喘息

 喘息では高度の好酸球増加を伴うことは稀なため、もし喘息患者に高度の末梢血好酸球増加を認めた際にはアレルギー性気管支肺アスペルギルス症や好酸球性肉芽腫性血管炎に注意する必要があります。

D. 好酸球性肉芽腫性血管炎(Churg-Strauss症候群)

 気管支喘息が先行し、末梢血好酸球増多とともに血管炎を生じる疾患であり、発熱、多発単神経炎(足のしびれ、麻痺など)、皮疹、中枢神経障害、消化管穿孔、腎障害などを認めます。血液検査では炎症反応陽性、好酸球の著しい増多、MPO-ANCA陽性 (約50%)、血清IgE高値を認めます。

E. アレルギー性気管支肺アスペルギルス症 (allergic bronchopulmonary aspergillosis: ABPA)

 アスペルギルスに対するアレルギー反応が発症に関与しています。高度の好酸球増多と中枢性気管支拡張を認めます。アスペルギルスに対するIgE抗体とIgG抗体が検出されます。

F. 好酸球性血管浮腫 (angioedema associated with eosinophilia)

 四肢に限局した浮腫を認めます。著明な末梢血好酸球増多にも関わらず臓器障害を伴わない疾患で、若年女性に多く、再発するepisodic型と再発しないnon-episodic型があります。日本ではnon-episodic型が多いとされています。2-8週で自然軽快傾向を認めるため無治療で経過観察することが多いですが、症状が強い場合には少—中等量のステロイドを投与します。

G. 特発性好酸球増多症

 特発性好酸球増多症は、1)末梢血好酸球増多(1500/ul以上)が6ヶ月以上持続し(または、好酸球増多による臓器障害により6ヶ月以内に致死的となり)、2) 二次性好酸球増多症が否定され、3)好酸球浸潤による臓器障害(心臓、中枢神経、皮膚など)を伴う状態と定義されています。近年、その原因の一部が明らかとなり、それに基づき分類と治療法が確立されつつあります。

  1. 骨髄増殖疾患性好酸球増多症/慢性好酸球性白血病
    受容体型チロシンキナーゼPDGFRαの恒常的な活性化が病態に関与しています。
  2. 異常なT細胞クローン増殖による好酸球増多症
    増殖した異常T細胞クローンがサイトカイン(IL-5)を産生し、反応性に好酸球が増えます。
  3. 単臓器障害を伴う好酸球増多症
    好酸球性胃腸症など、単臓器障害を伴う好酸球増多症。

H. 好酸球性筋膜炎

 激しい運動を契機に四肢に対称性有痛性の筋膜炎が生じる疾患です。皮膚は強皮症様の所見を呈します。

I. その他

 PIE症候群、副腎皮質機能低下症(アジソン病)、天疱瘡などの皮膚疾患、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、肺癌などの悪性疾患に伴って好酸球が増加することがあります。