病気について

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その他アレルギー性肺疾患

はじめに

 気管支喘息には、痛み止めやカビが原因で症状が悪化する病態や、血管炎を合併して神経などの臓器に障害をきたす病態があります。それぞれ特徴的な疾患であり、患者さん自身が知識を持つことで、対応可能なこともありますので、それらの疾患について説明します。

アスピリン喘息

 成人喘息の5-10%を占める頻度の高い疾患で、アスピリンをはじめとする非ステロイド性消炎鎮痛剤 (NSAIDs)の内服で喘息発作が誘発されます。そのため最近、アスピリン喘息という名称以外に「NSAIDs不耐症」という概念でとらえられています。

 消炎鎮痛薬は、風邪、腰痛、抜歯など様々な場面で医師から処方される可能性があるだけでなく、薬局で自分で買う風邪薬の成分にも含まれていることがあります。飲み薬だけでなく湿布や塗り薬で発作が誘発されることもあります。そのため、自分自身で何が発作を誘発する危険な因子であるかをしっかり理解して、医療者に伝える必要があります。

 一部の痛み止めは安全に使えることが多いため、どの薬剤を使えば良いかを主治医と相談しておくと良いでしょう。

 アスピリン喘息であっても、ふだんの治療では、一般の気管支喘息と同じようにステロイド吸入療法を主体にした発作の予防が大切です。しかし重症の気管支喘息となっている場合も多く、しばしばステロイド薬の内服が必要となります。

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症

 気管支喘息の患者さんの中には、カビ(真菌)に対するアレルギー反応が病状に関与している人がいます。正確な頻度は不明ですが成人喘息の数%を占めるのではないかと考えられています。原因となるカビの種類としてアスペルギルス属が90%以上であるため、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症と呼ばれますが、他のカビでも発症することから、アレルギー性気管支肺真菌症と呼ばれることもあります。レントゲンで肺に影を認めたり、太い気管が障害され(中枢性気管支拡張)、発熱や茶色の痰が出ることが特徴です。

 診断は、末梢血好酸球の増加、アスペルギルスに対する抗体検査、画像検査、喀痰検査などにより総合的に行います。

 治療は、基本的に気管支喘息の長期管理と同様ですが、肺に影の出る急性期にはステロイド内服が必要となることが多く、真菌に対する治療が行われることもあります。再発を繰り返すことで、肺が障害され重篤になる傾向があります。アスペルギルスは環境真菌であるため、換気や清掃などの屋内環境対策も大切です。

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症

 気管支喘息に伴って血管炎(血管炎症候群の項を参照)を併発する疾患です。病気の発見者の名前をとって、以前は、チャーグ-ストラウス症候群と呼ばれていた疾患で、日本において年間100例ほどが新規に発症していると報告されています。原因は不明ですが、主に小動脈に炎症をきたすことで、その血管が栄養する末梢神経、皮膚、肺、心臓、腎臓などが障害されます。症状は、障害される部位によって手足の運動障害やしびれ、むくみ、皮疹などとともに、発熱や体重減少といった全身症状もしばしば見られます。診断は上記の症状をふまえ、全身を検索していくことで総合的に行います。

 治療として、ステロイド内服治療を要することが多く、重症例においては、他の免疫抑制薬の併用も行われます。