疾患と治療

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腹腔鏡手術

消化管疾患に対する胸腔鏡・腹腔鏡手術

 これまで胃や大腸の一部あるいは全部を切除するような手術は、腹部に 30cmほどの大きな切開をおき、腹腔内を大きく開放することにより行われてきました。近年、胆石症の手術などに使われる腹腔鏡を用いた手術が食道・胃・大腸といった消化管の手術に応用され、より小さな傷口で、体に負担をかけずに手術ができるようになりました。当科では1991年よりこのような胸腔鏡・腹腔鏡をもちいた手術を行い、日本内視鏡外科学会の技術認定医を中心に、以下のような食道・横隔膜疾患、胃・十二指腸疾患、小腸疾患、大腸疾患について標準手術として積極的に行っております。

胸腔鏡・腹腔鏡手術の特徴

 胸部の場合は片方の肺を萎ませ、また腹部の場合は腹腔内に空気(二酸化炭素)を入れて膨らませて空間を作り、内部にカメラを挿入、胸壁あるいは腹壁にあけた小さな穴から細長い器具を使って手術を行います。そのため、(1)体の表面にできる傷口が小さいこと、(2)狭い空間でもとてもよく見渡せること、の 2つがこの手術の一番の特徴と言えます。

 体にできる傷口が小さいことから、一般的に手術後の痛みが軽くなる、出血量が少ない、手術後の体の回復が早く、入院期間が短くて済む、と言った効果が認められています。また、傷口に腸などが癒着して起こる様々な後遺症なども少なくなることが期待されています。

 この他、体の奥深く、たとえば横隔膜の上下や骨盤腔の底などでは、通常の開腹・開胸手術では時に執刀医しか覗くことができないような手術になりますが、このような腹腔鏡カメラを使った手術では、画面がモニターに映し出されるので、執刀医ばかりでなく助手、看護婦など手術に参加するスタッフ全員が執刀医の作業を見ながら、それぞれの仕事をすることができます。

 ただしこのようなカメラを使った手術はすべての消化管の手術に適応できるわけではありません。疾患の種類や進み具合、場所などにより異なります。また、胸腔鏡・腹腔鏡手術で始めても、手術前にはわからなかった異常や出血などにより手術の途中で従来の開胸・開腹手術に変更することを余儀なくされることが時にあります。複雑な作業を要する手術では、従来の開胸・開腹手術と比較して1~2時間余計に時間がかかる場合もあります。詳しくは担当の医師にお尋ねください。