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留学体験記

 

現在 Cincinnati Children's Hospital に留学中の武藤先生からお便りをいただきました!

 

 2005年卒の武藤朋也です。私は2015年4月からアメリカ中西部のオハイオ州シンシナティにあるCincinnati Children's Hospital Medical Center (CCHMC)のDivision of Experimental Hematology & Cancer Biologyでポスドクとして基礎研究をしています。CCHMCは、経口ポリオワクチンを開発したSabin博士など著名な医学者を輩出している歴史ある小児病院です。臨床のみならず基礎研究もとても盛んな施設で、小児疾患を中心とした様々な病気の原因解明、新規治療の開発に力を注いでいます。

 私はDaniel Starczynowski 博士のラボに所属し、自然免疫シグナルに着目した骨髄異形成症候群の研究を行っています。ラボメンバーの構成は、テクニシャンが3人、ポスドクが4人、大学院生が3人です。国籍は、ボスがカナダ出身で、メンバーはアメリカを主として中国、アルゼンチンなどから来ており国際色豊かです。ボス(みんなDanと呼んでいます)とラボメンバーはいつも気さくに会話をしていて、メンバーの誕生日にはドーナッツを買ってきたり、論文のacceptやGrant・Fellowshipの獲得の際にはメンバー全員でお祝いの食事に出かけたり、アメリカらしい職場の雰囲気があります。また、研究だけでなく家族との時間などプライベートの時間も大切にしているように思います。ボスとの個別ミーティングは毎週金曜日にあるのですが、ミーティングの最後は「今週末は何をするんだ?(もちろん、研究の話ではありません)」という質問され、自分のプライベートを説明する時間になっています。私のこちらでの新しい経験や日常生活への適応を、ボスは嬉しそうな表情で聞いてくれます。

 こちらの研究環境に関しては、まず動物実験施設とスタッフの充実度に驚かされました。動物施設には専任のスタッフがいて、マウスの世話は全て行ってくれますし、Divisionとラボ自体にもそれぞれ動物実験のテクニシャンがいて個体の管理・交配・genotyping・採血・薬物注射・幹細胞移植・放射線照射など大部分の仕事を行ってくれます。また、施設内にたくさんのCoreが存在し、ノックアウトマウス作製、網羅的遺伝子解析、フローサイトメーターを用いたソーティング、ベクター・ウイルス作製、病理学的検査など、各Coreに料金を支払う事により実験を依頼する事ができます。これにより結果が安定し、仕事が効率的に進むため、複数のプロジェクトを同時並行で行う事ができます。また、私の所属するDivisionでは、20以上もの血液・癌関係の研究室が一つのフロアに位置しており、研究室間の垣根が低い環境の中で恒常的にディスカッションをしながら研究を進めることができます。例えば以前、ボスとの個別ミーティング中に我々二人では結論を出せない問題に直面した際、「じゃあ、これは○○に今から聞きに行こう!」とアポなしで他のラボのボス(Principal Investigator: PI)の部屋まで一緒に行き、その道の専門家の意見を聞く事ができました。さらに一度顔見知りになってしまえば、その後は自分のボスを通さずに直接他のラボのPIと必要に応じてdiscussionできるようになります。ボスからは自分のラボだけでなく施設全体における”Visibility”が大切だと言われているので、今後も他のラボの研究者と積極的にコミュニケーションをとっていけたらと思っています。このように日本の多くの施設と比べると環境面においては差があると思いますが、一方で日本人の実験の技術力や勤勉さは胸を張れると思っているので、お互いの長所をうまく融合させて自分なりに相乗効果を生み出したいと考えています。

 生活面に関しては、渡米当初のセットアップの時期にはストレスフルな日々が続きましたが、同じ事を経験されてきた沢山の日本人研究者の皆さんに助けて頂きながらなんとか生活の基盤を作る事ができました。海外留学者に共通したことだとは思いますが、慣れない異国の地では日本人同士のつながりが強く、今まで経験した事のない家族的なつながりを感じます。様々な人との出会いが留学における最も大きな財産だと感じる人が多いのも納得です。

 現在私は研究施設から車で30分程度のところに住んでいますが、敷地内にはリス、ウサギ、白鳥、gooseなどが住んでいて自然を満喫でき(さすがにシカが出た時には驚きました)、敷地内にあるテニスコートやプールは子供だけでなく大人も楽しむことができます。また、こちらはゴルフコースを土日でも30ドル程度と日本では考えられない値段で利用できるため、ゴルフに夢中になる研究者も多いです。その他娯楽に関しては、シンシナティレッズやベンガルズというMLB、NFLのチームもあるので、アメリカのスポーツに対する独特の熱気を直接感じる事ができます。大都市と比べると刺激が少ないのは否めませんが、家族とのんびり過ごすにはとてもよい環境です。食事に関しては、アジアンスーパーマーケットを使えばそれなりの食生活を送れますが、やはり限界はあり、寿司やうな重、ラーメンなどがそろそろ恋しくなってきました。

 留学生活はまだ始まったばかりで今までは環境に順応するために時間を要していましたが、これからは帰国後の研究を意識しながらこちらでの研究を進めていきたいと思っています。最後に、今回の留学にあたりサポートして頂いた全ての方々にこの場を借りてお礼申し上げます。

                     2015年9月 武藤朋也 

 

写真 : 右から私、ボスのDaniel。ラボメンバー全員でのオハイオ川クルーズにて。