概要

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ECMO(体外式膜型人工肺)プロジェクト

本邦におけるECMOは,体外循環を用いた心肺蘇生(extracorporeal cardio-pulmonary resuscitation: eCPR)での使用が多く,行える施設数が多い反面,1施設当たりの症例数が限られているという問題があります.当院ではeCPRを含む様々な病態に対してECMO治療を行っています.

当院におけるECMO施行状況と取り組み

当院では1993年以来,2016年までに339例に対してECMOを施行してきました.症例数は年々増加傾向にあり,最近は年間約40例となっています.内訳として,院内・院外で発症した心停止症例に対するeCPRが約半数をしめ,続いて,心原性ショック,敗血症性ショックなどの循環不全に対するVA(veno-arterial)ECMO症例が多くなっています.一方,呼吸不全に対するVV(veno-venous)ECMOにも積極的に取り組んでいます.
当院では,院内急変患者発生時に,当科の医師・看護師からなる急変対応チーム(medical emergency team; MET)が出動し治療を行うRapid Responseシステムが確立していますが,院内心停止症例に対してECMOが必要であれば,METが迅速にEMCOを導入します.一般病棟やCT室で導入することもあります.また当院は,心臓血管外科を中心に補助人工心臓(ventricular assist device; VAD)を用いた重症心不全の外科治療にも積極的に取り組んでおり,また,呼吸器外科を中心として肺移植も行っています.当科では,それらの症例に対するECMOを含む人工補助療法を駆使した集中治療も行っています.

ECMOチーム

2013年に発足した当院ECMOチームは,医師(救急科・集中治療部,循環器内科,心臓血管外科,その他),看護師,臨床工学技士等で構成されています.長期施行可能なECMOシステムの構築,ECMOマニュアル作成,症例データベースの構築,トレーニングプログラムの作成等を行っています.

トレーニングプログラム

院内:回路を用いたトレーニング(Water Drill),シナリオベースのシミュレーション(ECMO導入,ECMO患者の搬送等),ECMOに関する講演やMortality&Morbidityカンファレンスを定期的に行っています.
国内:本呼吸療法医学会・日本集中治療医学会合同ECMOプロジェクト“ECMOシミュレーションラボ”のプログラム・テキストを作成し,定期的に開催しています.
海外:米国やスウェーデンのECMOセンターでの,一週間程度の研修に積極的に参加しています.医師だけでなく,医師・看護師・臨床工学技士からなる多職種チームでのコース受講も行っています.

その他

当院において,ECMOは日常の集中治療に不可欠な治療手段となっており, その頻度は今後さらに増加すると考えられます.引き続き, 教育プログラムを充実させ,治療の質を向上させるための取り組みを進めていきます.