教授挨拶

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着任時の挨拶

主任教授の生水真紀夫(しょうず まきお)です。2005年12月に赴任しました。

 新しく教室を作るに当たって、2つの目標を掲げています。第一は、“リサーチマインドをもった臨床家”を育てることです。第二は、“周産期・不妊生殖・婦人科腫瘍の3つの分野でおのおの専門家を育成し、バランスのとれた教室”を作ることです。このような教室を作って、次代の産婦人科医療を担うに足る素養を身につけた人材を育てていきます。
“リサーチマインドをもった臨床家”は、私自身の経験に基づいています。私は、医師となって間もない頃にエストロゲン合成酵素欠損症の症例を世界で初めて報告しました。この発見は、それまで全く考えつかなかったようなエストロゲンの役割を明らかにする契機となり、高い評価を受けることになりました。臨床症状や所見を分析して合理的な仮説を立て、これを実証していく一連の作業(サイエンス)は、実に楽しいものです。毎日わくわくしながら研究を進めることができました。この経験を踏まえ、紳士に日常診療に取り組む中から問題を見つけ、これを自ら解決していく臨床医学研究のおもしろさ・醍醐味を皆さんに伝えたいと思っています。
 “リサーチマインド”は、よい臨床医となるための大切な要件でもあります。たとえば、患者さんの症状や所見にもとづいて診断をくだそうとする場合を考えてみましょう。症状や所見を、既存の情報と照合して合致する項目のもっとも多い疾患を推定病名とする方法だけで診断するのであれば、コンピューターにはかないません。まして、既存情報にないような未知の病気は診断できないことになります。優れた臨床医は、経験と最新の知識に基づいて情報の優劣を決め、足りない情報を補完しつつ診断をしているはずです。この、情報の優劣の判断には、客観性・合理性が大切です。この客観的かつ合理的な判断は、サイエンスと共通するものであり、トレーニングにより養われるものです。
 新しい教室での第二の目標は、周産期・不妊生殖・腫瘍の各専門分野のバランスをとることです。大学・附属病院での研修目標は3つあります。第一は、産婦人科認定医(卒後5-7年)の養成、2)周産期・不妊生殖・腫瘍の各専門医を養成すること、3)医学研究者の育成 の3つです。1については、一般の卒後研修施設での取得も可能ですが、関連施設でのローテションを取り入れた大学での研修には偏りのない研修が保証されるというメリットがあります。2の専門医資格の取得については、研修施設の要件が厳しいために大学以外ではすべての受験資格をそろえることは困難と思われます。大学病院での後期研修では、認定医資格のための研修を終えた後希望により専門医取得のための研修にスムーズに移行することができます。また、腫瘍専門医などを目指す場合には、大学だけでなく大学以外の関連施設での研修も可能です。
 大学が果たすべき大切な役割のひとつが、臨床医学の研究者の育成です。基礎医学の成果を、いちはやく臨床に結びつけていくための研究(トランスレーショナルリサーチ)が大学病院の使命です。千葉大学では、臨床医としての十分な経験を積んだ基礎医学の研究者が多く、トランスレーショナルリサーチを円滑に行うための土壌が備わっています。すでに当科では、千葉大学医学部の伝統の研究テーマである免疫学を背景に、子宮頚癌・卵巣癌・絨毛癌・胎児発育遅延・性分化異常などに関する臨床的研究が盛んに行われ、診断や治療の面で臨床への応用が可能となっています。
 最後に、あらためて強調しておきたいことがあります。それは、研修の質と成果という点です。本年4月より、後期研修制度が始動します。この研修の質と量を保証するために、当科として関連施設とともに制度上いくつかの工夫を行いました。研修医に良質な研修を受ける権利を保障するためのこれらの工夫がうまく機能してくれることを希望しています。もうひとつ、研修成果を高めるための大切な条件があります。それは、研修医のみなさん自身の問題です。ひとつとつの症例を経験するたびに、なにをどれだけ深く学ぶかという点はあなたがたの姿勢にかかっているのです。日常的によく見かける卵巣癌症例であってもすべての点で全く同じ症例というのはありません。年齢や背景、症状や検査値などそれぞれ異なっています。とおりいっぺんの治療法を覚えるのではなく、標準治療のエビデンスのレベルを踏まえ、個別化した治療の可能性があるのかなど、症例を経験するたびにさらに深く学んでいく姿勢をもって研修を続けてください。医師になって間もない頃に学んだことが原体験となります。
どうぞ、大切な研修期間を有意義に過ごし、立派な臨床医・医学研究者となって下さい。医局全員が、それぞれの立場から研修を応援していきます。