脳神経外科紹介

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ご挨拶

樋口 佳則 教授

脳神経外科を目指す学生・レジデントのみなさんへ
 - 千葉大学大学院医学研究院 脳神経外科学教授 -

私は,2023年11月1日付で千葉大学脳神経外科学教室 第5代教授を拝命いたしました.当教室は1971年に牧野博安教授のもと開設され,第2代 山浦晶教授,第3代 佐伯直勝教授,第4代 岩立康男教授と引き継がれた歴史ある教室です.千葉大学脳神経外科学教室は,同門180名と23の関連施設に支えられ,若手脳神経外科医の教育と先端医療の研究開発に取り組んでいます.2021年には開講50周年を迎え,次の新しい半世紀へとスタートしました.脳神経外科学の黎明期から50年を超えるこの期間,様々な医学の進歩がありました.この素晴らしい伝統を引き継ぎ,治療困難な病と対峙し,最先端の医療を推進して参ります.また,将来の自分の姿を心に描く若い医師が集い,各々が目指す多様な方向性を支え,「未来の医学の発展に寄与する」脳神経外科を育てることが,私たちの使命と考えています.

脳神経外科には,脳血管障害,脳腫瘍,脳神経機能疾患,脊椎脊髄疾患,小児疾患,神経外傷などの様々な専門領域があります.私たちは,この多様な疾患に対応し,千葉県の「最後の砦」として機能しています.さらに,未来の医療を作ることは,大学病院の使命です.千葉大学に数多く存在する世界的レベルの基礎教室と連携し,未来の日本の医療,さらに世界の医療に貢献できるよう努力しています.

千葉大学医学部附属病院では,包括的脳卒中センターを有し,多くの部局との連携し脳血管障害に対して最先端の治療を行うとともに,時間との勝負ともいえる血管内血栓回収術などにも積極的に取り組んでいます.令和5年6月には脳卒中ケアユニット(SCU)が開設され,さらに多くの患者を治療しています.脳腫瘍分野では,頭蓋底手術,間脳下垂体手術において日本有数の症例数を有しています.若手・中堅の脳神経外科医への教育も重視しており,解剖学教室のご協力のもと行っているClinical Anatomy Laboratory (CAL)でのハンズオンセミナーや実習は,この分野の手術を志す医師の教育,難易度の高い手術への修練として重要な機会となっています.脳実質内腫瘍である神経膠腫(グリオーマ)は,難治性疾患の代表です.詳細な術中モニタリングに基づく覚醒下開頭手術や個別化医療を推進し,患者の神経機能を温存しながら完全治癒を目指した治療の研究を行っています.パーキンソン病や本態性振戦,ジストニア,難治性疼痛,てんかんなど,薬物治療ではコントロールが困難な症例に対し,機能的脳神経外科手術があります.脳深部刺激療法や脊髄刺激療法などデバイスを用いた治療法や,一時は手術数が減少していた凝固術も,「脳の異常なネットワークを遮断する」という目的で徐々に増えてきています.「脳を治療する」,「機能を改善させる」この分野は,今後日本がさらに高齢化が進む中で重要な分野となります.当教室ならびに関連施設では,頭部外傷,水頭症,脊椎脊髄疾患,小児脳神経外科など脳神経外科学の多くの領域を網羅し,多様性を有する脳神経外科となっています.

 ひとりで新しい道を切り開き,多くの患者を救うことには限界があります.多様な脳神経領域を志す医師が集まり,未解決の問題に協力して立ち向かえば,「より速く」「より多く」の患者に貢献することができます.脳神経外科学の発展には,次世代を担う若い脳神経外科医が必須です.いっしょに未来の脳神経外科を作っていきましょう.