研究内容
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私たちの研究室では、マウス分子遺伝学を基盤としつつ、生化学的手法、質量分析、次世代シークエンスを用いたオミクス解析、画像解析などを組み合わせ、生殖細胞の発生や減数分裂の仕組みに迫る基礎研究を進めています。発生生物学・細胞生物学・分子生物学・生化学といった幅広い視点から研究を展開しており、とりわけ不妊症の原因解明にも関連するテーマとして、疾患モデルマウスを駆使した研究を推進しています。

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 体細胞分裂と減数分裂の違いを生み出す本質的なメカニズムは何か?生殖発生と減数分裂を連携させる仕組みは何か?この二つの問いを大きな視点として掲げ、当グループでは以下の6つの課題を研究の柱として取り組んでいます。

  1. 減数分裂の開始機構:体細胞増殖から減数分裂への切り替え制御
  2. 減数分裂型の細胞周期:細胞周期を減数分裂仕様に特殊化するメカニズム
  3. 減数分裂の雌雄性差:減数分裂の制御における雌雄性差のメカニズム     
  4. 減数分裂の染色体構造:体細胞分裂と減数分裂の違いを生み出す染色体構造
  5. 生殖発生と転写調節:減数分裂期に特異的な転写調節機構
  6. 機動性ゲノム:減数分裂期におけるトランスポゾン制御

 近年、オルガノイドや培養技術の飛躍的な進歩により、試験管内で卵子や精子のもととなる生殖細胞をつくり出すことが可能になりつつあります。しかし、これらを自律的に機能する卵子・精子へと完全に成熟させるうえで最大の壁となっているのが、「減数分裂を正しく進行させること」です。この背景からも、減数分裂研究は国際的に大きな注目を集めています。

 当グループは、減数分裂開始を決定づける“親玉“ともいえる因子を発見しており、国際的にも強みをもつ立場から研究を進めています。この独自の研究リソースを活かし、減数分裂と生殖発生がどのように連携しているのかという根本的な問いに挑むとともに、将来的には in vitro での卵子・精子作成につながる基盤研究を推進しています。最終的には、体細胞分裂から減数分裂を人工的に誘導できる再構成系の確立を目指しています。

 また、卵子の老化と減数分裂エラーの頻度には相関があることが知られており、こうしたエラーはトリソミーなどの染色体異常や、受精後の着床前初期胚発生不全にも直結します。少子高齢出産という社会的背景を踏まえても、この課題に取り組む意義は極めて大きいといえます。

 私たちはこれらの研究を通じて、減数分裂と体細胞分裂との本質的な違いを明らかにし、不妊症の原因解明や臨床応用への橋渡しとなる新しい基礎的知見を創出することを目指しています。さらに、学内外の研究者との積極的な共同研究を展開し、学術的価値の高い成果を世界へ発信していきます。

 

研究紹介等の動画(クリックしますとYouTubeへ移動します)

研究紹介動画

「減数分裂の謎に挑む」 石黒 啓一郎/熊本大学 発生医学研究所・教授

染色体制御分野 2020.3 紙芝居編 ver3