減数分裂の開始機構
ページタイトル画像

体細胞分裂から減数分裂への切り替え制御に関する研究

 生殖細胞は体細胞分裂による増殖を経た後に、その一部の集団がspontaneousに減数第一分裂のpre-meiotic S期へと進行する(図1)。この時、体細胞型増殖から減数分裂型cell cycleへの切り替えが起きていると推測されるが、その分子機構は多くの点が不明のままである。特にこの減数第一分裂への移行期においては染色体構造が減数分裂仕様に再構成されると推測され、染色体制御を理解する上でキーとなるステージであるにもかかわらず材料の量的・数的な制限のため長らく研究が膠着していた。我々は減数分裂の開始に決定的な役割を担う新規の転写活性化因子MEIOSINを同定した(Dev. Cell, 2020)。これを欠損させると細胞周期の維持に関与する体細胞分裂型Cyclinの異所的発現やM期様染色体構造など体細胞様の特徴を示す細胞の蓄積を伴って、体細胞分裂から減数分裂への切替えが見られなくなる(図2)。MEIOSINはSTRA8と複合体を形成して減数分裂関連遺伝子の転写開始点近傍に結合して転写活性化に働いており、pre-meiotic S期のタイミングで減数分裂の達成に必要なプログラムをインストールしていると考えられる(図3)。さらに、MEIOSIN-STRA8複合体によって活性化される下流遺伝子の中から新規の減数分裂関連遺伝子を複数見出した (Takemoto et al, Cell Reports 2020, Fujiwara et al. PLOS Genet 2020, Tanno et al, iScience 2022 Horisawa-Takada et al., Nat.Commun. 2021, Alavattam et al, Genes Dev 2024, Yoshimura et al, Nat.Commun. 2024) ことにより、国際的にも多くの後発の参入を呼び込むなど高い波及効果をもたらす成果を上げた。MEIOSIN-STRA8複合体の下流遺伝子には、卵巣型の減数分裂と精巣型の減数分裂とで、異なる標的が存在する可能性が高い。本研究ではMEIOSIN-STRA8複合体の下流で働く分裂未知の遺伝子の解析を卵巣と精巣で実施する。

ishiguro1-1024x373.jpg

図1 体細胞増殖から減数分裂への切り替えと減数分裂の素過程

図2-2.png

図2 MEIOSINは体細胞分裂から減数分裂への切替えに働く

図2.png

図3 MEIOSIN-STRA8複合体は減数分裂関連遺伝子の転写活性化に働く