機動性ゲノム
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減数分裂期におけるトランスポゾンの制御

 減数分裂を進行中の哺乳類生殖細胞は、個体の全発生過程を通して一過的にレトロトランスポゾンの発現バーストが活発となる時期として知られる。一方、レトロトランスポゾンの過度の上昇は、減数分裂チエックポイントにより排除されることから高いハードルとなっている。しかしながら種分化のプロセスを考えると、生殖細胞は配偶子形成へのリスクを抱えながらも、ゲノムの可変性を誘導するためにあえてレトロトランスポゾンの活性化を容認している可能性がある(図8)。生殖細胞におけるトランスポゾンの活性化を許容およびチェックする機構の角度からから検討を行い、トランスポゾンがもつ「有害」な側面に対する防御と許容との絶妙なバランスの中で、生殖系列が如何にして「有益」な新規機能を次世代に伝播させ獲得してきたのか?、レトロトランスポゾン制御の雌雄の生殖細胞における違いは何か?、という新しい生物学分野の創成を目指した問題に取り組む。  この目的のため、当グループは学術変革領域A「機動性ゲノム」を立ち上げて、共同研究を実施しています。トランスポゾンは、新規プロモーター活性などを宿主ゲノムに提供することで宿主の遺伝子発現、ひいては形質発現の多様化に寄与するとともに、進化の推進源として機能することが知られるようになりました。当グループでは、トランスポゾンと宿主との相関がどのように宿主の生命機能制御に寄与し、世代を超えて新たな機能獲得に働きうるのか、という問題にチャレンジします。これまでアドレスできなかった、既存の学問分野の枠に収まらない学際的な研究を目指しています。

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図8 減数第一分裂前期のパキテン期にStochastic にTEが脱抑制しているマイナー細胞集団