減数分裂の染色体構造
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体細胞分裂と減数分裂の違いを生み出す染色体構造

 減数第一分裂では相同染色体間で対合と組換えが起こり、染色体数の半数化という特殊な染色体分配を達成する。特に減数分裂に特化したTADの消失と「Axis-Loop」と呼ばれるクロマチン構造への再編、相同染色体の対合に働くシナプトネマ複合体集積、テロメアの核膜へのアンカーリング、姉妹動原体の一方向性結合など、体細胞分裂では見られない染色体構造の大幅な特殊化が見られる。特筆すべきことに、これらはMEIOSIN-STRA8複合体によって活性化される減数分裂に特異的な染色体結合因子によって演出される。

 これまで当グループが推進してきた染色体構造の研究(Ishiguro et al., EMBO Rep. 2011, Ishiguro et al., Genes Dev. 2014, , Kim et al Nature 2015, Ishiguro EMBO Rep. 2016, Takemoto et al, Cell Reports 2020, Fujiwara et al. PLOS Genet 2020, Tanno et al, iScience 2022)から、減数分裂仕様のクロマチン構造の形成過程の理解と、体細胞分裂と減数分裂の違いを生み出す仕組みの飛躍的な理解に繋がった(図6)。とりわけ、減数分裂型コヒーシンは減数分裂に特有の染色体構造の骨組みとして極めて重要な役割を果たしているが、老化卵子において、コヒーシンの減少と加齢に伴う高頻度の染色体分配異常と相関があることも指摘されている。長期の休眠状態において卵子の染色体上のコヒーシンが安定に保持されるメカニズムが存在が推定されるが、その実体は明らかではない。

 このような減数分裂に特異的な染色体因子は他にもまだ見つかっていないものがあると推定される。本研究では、このような新規の染色体因子を同定して、減数分裂に特有の染色体動態のメカニズムを明らかにする。

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図6 体細胞分裂と減数分裂の違いを生み出す染色体因子