千葉大学大学院医学研究院
アレルギー・臨床免疫学
千葉大学病院
アレルギー・膠原病内科
成人発症スティル病は、発熱、リンパ節腫脹、関節痛などの全身症状を示す疾患で、持続する高熱をきたす病気(不明熱)の中で、重要な位置を占めています。
成人発症スティル病の原因は不明ですが、ウイルス感染など何らかのきっかけで、炎症を引き起こすサイトカインというタンパク質が血液中で増加することが関与していると考えられています。
成人発症スティル病の症状、検査所見
発熱、関節症状、皮疹が3大症状です。発熱は、日内変動が大きく、夕方や早朝に39℃以上にも及ぶ発熱をきたすことが多いです。
関節症状は、手首、膝、足首など全身の複数の関節に起こります。
発熱の時期に一致して出現するサーモンピンク色の特徴的な皮疹が出ることが多いですが、出ない人もいます。
他に咽頭痛やリンパ節腫脹、筋肉痛などが出る事があります。
検査所見では、白血球増多、血沈亢進、CRP上昇がほぼ全ての患者さんでみられます。
また、血清フェリチン値が著明に増加し病勢を反映します。
一方、その他の膠原病で見られることが多いリウマトイド因子や抗核抗体は、多くの患者さんで陰性です。
一部の患者さんでは、胸膜炎や心膜炎、血球貪食症候群といった臓器障害をきたすことがあります。
血球貪食症候群(注)を合併すると、白血球や血小板の減少、肝酵素(GOT、GPT、LDHなど)の著明な上昇をきたします。
注)血球貪食症候群とは、さまざまな基礎疾患を背景に、マクロファージなどの細胞が活性化し、骨髄などで血液細胞(白血球、赤血球、血小板)を貪食し、血液細胞が減少してしまう状態です。
上記のような症状、検査所見を総合的に判断して診断しますが、いずれも成人発症スティル病だけにみられるものではないので、他の疾患の可能性を除外する必要があります。
具体的には、敗血症や伝染性単核症などの感染症、悪性リンパ腫、白血病などの悪性腫瘍、他の膠原病などです。
これらの可能性を除外するため、血液検査のほか、血液培養などの細菌学的検査、リンパ節生検などの病理学的検査、CT、エコーなどの画像検査などを必要に応じて行います。
軽症例では、非ステロイド性消炎鎮痛剤で対処することもできますが、多くの患者さんでは、中等量以上のステロイド剤が必要になります。
さらに血球貪食症候群などの重篤な臓器障害を合併した場合には、ステロイド大量投与、免疫抑制剤を投与せざるを得ないことがあります。